Clásicos japoneses con furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lee 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 178.609 caracteres · 362 pantallas
八
「? ……」
そこへ、慎吾はしゃがみ込んだのである。
八
「仕事にかかったら、このごろは、誰が来ても小屋にゃ入れねえんだ」
七之助はうしろ向きになったまま、火薬にあわせるほおの木炭を砥でおろしていた。
「くさいこと、ここへ入ると」
「あたりまえさ、嫌なら、帰ってくんな」
「まー」
と、睨んだが、坐り場所もないので、お芳は立っていた。
仕事にかかると夢中になる七之助は、彼女を振り向いても見なかった。そばには、正覚坊の卵みたいな、三寸玉から五寸玉ぐらいまでの花火の外殻が、まだ雁皮貼りの生乾になって幾つも蔭干しになっているし、膠を溶いた摺鉢だの、得体の知れない液体を入れた壺だの、藁灰を入れた桶だの、そのほか秤とか、刃物とか、硫黄の塊片とか、なにしろ眼にあまるほど散らかっている。
いつもは、そんなにも感じなかったが、慎吾の話を聞いてから、彼女の眼にはそれらの物が、みんな浅ましい無智の蒐集に見える。
小屋の隅にはまた、蓆をしいて、穢い土が盛り上げてあった。その土には、茶褐色の羽虫だの白い微生虫だの、ぞろぞろとうごめいていた。無智の虫! 彼女は眉をひそめた。
「どうするの、こんなに、家の中に穢い溝土を運びこんで」