Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lee 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 178.609 caracteres · 362 pantallas

Aozora Bunko

「ほんとにか」

――だが、彼はすぐに考え直した。

「いけねえ、いけねえ。おれは気まぐれもんだ。いつまた飽きが来ねえとも限らねえ。仕置場の空に眼を塞ぐ最期にだって、生涯のうち、一つぐらいは、きれいな憶い出がねえのは淋しい。十三夜の晩だけを覚えて、おめえとは、このまま、別れることにするよ」

「…………」

お喜乃は、何もいえなかった。氷の中の花のように、凍っていた。

「達者でいねえ」

――十三夜だ、後の月だ、治郎吉は、こんな月は、生れてから、見たことがないと思った。

「おれも、もう少しゃ、生きているぜ。そうよ、俺の稼ぎは、金じゃねえ、自分の寿命を稼ぐようなもんだ。――そして、きっとその間に、脇坂佐内の土蔵の中へ、千両だけは返してやるぜ。父さんへの手向けだ。――じゃあ、あばよ」

「あっ、待って!」

お喜乃は、飛沫をあびて、わっと、泣き倒れた。治郎吉の影は、もう、水面の下にかくれて、ただ一すじ、波の影だけが、北岸の方へよれて行った。

また泥棒がはいった。

しかも、仁吉が、安治川のもくずになった晩に、その仁吉の家に、はいった泥棒である。

階下では、まだ弟子の松が、常連を相手に将棋をさしていた。