Clásicos japoneses con furigana
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はたのてい
波多野邸
豊島 与志雄
Lee 波多野邸 (はたのてい) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 22.194 caracteres · 45 pantallas
表の店……いや、ここから言うと裏の店に、電話があるんだな。」
その薄暗い小さな酒場に電話の便宜があることが、井野老人の注意を惹いたらしかった。
酒場の土間の方には、棕櫚竹の鉢植が幾つも並んでいたが、それも井野老人の注意を惹いたらしかった。
「棕櫚竹がたくさん並んでいるが、なぜ棕櫚竹ばかりなんだ。」
それには洋介は答えが出来なかった。だが答えはいらなかった。
「いや、なかなか宜しい。」
二人は小部屋の方に坐りこんで飲んだ。洋介の飲み仲間が三人ほど一緒だったが、井野老人は前々からの知り合いのように遠慮なく振舞った。
大田梧郎が幾度も、ビール瓶を新たに持って来て、空いてるのをさげていった。
「やあ、御主人か、度々どうも恐縮だな。然し、こんなに飲んでも構わんのかな。」
大田は無表情に頷いた。
「いや、ますます宜しい。ここでは、たとい私が蟹であっても、自分で自分の手をもぎ落さないで済みそうだ。」
「蟹というのは、何のことですか。」と、洋介は尋ねた。
「弁慶蟹……あの赤い小さなやつ、知っているね。」
井野老人はさもおかしそうに首を縮めた。――あの弁慶蟹は実にばかな奴だ。