Clásicos japoneses con furigana
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せいひんのしょ
清貧の書
林 芙美子
Lee 清貧の書 (せいひんのしょ) de 林 芙美子 (はやしふみこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 18.061 caracteres · 36 pantallas
私は、そんな優しい言葉をかけられると、妙に胸が詰った。で、いかにも間抜けた女らしく見せるべく、私は頬っぺたをふくらまして微笑んでみせた。頬をふくらましていると、眼の内が痛い。私はじっと脣をつぼめて、与一が窓から覗くのを待った。
山へ行く汽車は煤けたままで、バタバタ瞼のように窓を開けた。窓が開くと、たくさんの見送りが、蟻のように窓に寄った。与一は網棚の上に帽子と新聞包みを高く差し上げている。咽喉仏が大きく尖って見えた。その逞しい首を見ていると、耐えていた泪が鼻の裏にしみて、私は遠い時計の方を白々と見るより仕方がなかった。
「おいッ!」
与一はもうキャラメルを一ツむいて、頬ばったらしく、口をもぐもぐさせて私を呼んだ。
「何?」
「キャラメル一ツやろう」
誰も私達の方を向いてはいなかった。与一の座席は洗面所と背中合せなので気楽に足を投げ出して行けるだろう。与一は思い出したように指を折って、「三七、二十一日もかかるンかね」一人で呟いてうんざりしたかの風であった。
「誰も見てくれるもンが無いンだから、病気をせんように、気をつけるンだぞ」
私は汽車が早く出てくれるといいと念じた。