Clásicos japoneses con furigana
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おんしつのこい
温室の恋
国枝 史郎
Lee 温室の恋 (おんしつのこい) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 11.010 caracteres · 22 pantallas
漸時親しくなるに連れて、彼女の家の内幕が次第に解かって参りました。その中分けても私の眼に怪しく映ってならなかったのは料理人の季参でございます。彼は純粋の広東人で、常時穢い支那服を纏い弁髪をさえ貯えていましたが、何ういう訳か彼女の家庭では一番勢力を持っていました。主人の彼女さえ季参の為には時々叱られる程でした。
それに最う一つ、私に執って、何うにも不思議でならないのは、温室に這入っている間中、何処か手近の地の底を誰か掘ってでもいるような音が、聞えて来ることでございます。
「どこから聞えて来るのでしょうね、地を掘るようなあの音は?」何気無く或日斯う云って彼女に私は訊いたものです。
「え? 音ですって? どんな音?……何んにも聞えないじゃありませんか!」
「いいえ、聞えて来ますとも、地の底を掘るような物音が」
「叱!」と突然鋭い声で彼女は私に注意しました。驚いて彼女の顔を見ると、恐怖に充ちた燃ゆるような眼が、硝子壁を透して庭の隅へ注がれているではありませんか。そして其視線の落ちた所には、料理人の季参が腕を組んで歩き廻わっているのでした。
或日彼女は私を捉らえて無理に支那服を着せました。