Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

ja-reading.com

Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.

おぼるるもの

溺るるもの

豊島 与志雄

Lee 溺るるもの (おぼるるもの) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 17.690 caracteres · 36 pantallas

Aozora Bunko

私が一週間ばかり姿を見せなかった時、ひどく心配して、ひそかに易者のところへ馳けていったこと。夕方、私らしい者が微笑して通りすぎたので、裏からぬけ出して追っかけて行くと、人違いで困ったこと。何だか無性に癪に障って、コップで酒をあおって寝たら、一日逢わねば千秋の……と何度も寝言を云って、さんざん年寄りのお客にからかわれたこと。それから……。

嘘ともつかず本当ともつかない、煙草の煙のような話だった。そしていつも帰りには、彼女は私の袂に、敷島を一袋入れてくれた。

その一袋の敷島が、私の気を惹いた。と共に、彼女の眼に涙を見出すようになった。

眼の視力の鈍い、どこかきかぬ気らしい、白蝋の面のようなその顔は、涙にふさわしくなかった。けれどともすると、ふと言葉が途切れて長く黙ってる折など、彼女はぼんやり空を見つめて、我を忘れたようになっていた。そして殆んど無意識的に、眼をしばたたき、肩をこまかく震わせた。――彼女は泣いていた。

「おい、喜代ちゃん!」

彼女は放心の状態で、曖昧な微笑を頬に浮べかける……。がその時には、私の方で、もう眼に一杯涙をためていた。

「おばかさんだね。