Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

Lee 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 185.496 caracteres · 368 pantallas

Aozora Bunko

と姉小路卿は不思議に思った。

が、何気ない穏かな声で、

「今もおいでにござりまする」

「おいで? おいでと仰せられるは?」

「お館においでにござりまする」

「ではどこへもお輿入れなく?」

「はいさようにござりまする」

「一度も、どこへも、お輿入れなく?」

「はいさようにござりまする」

「…………」

伊豆守はまたも沈黙した。

眼に涙が光ったようであった。

(はてな?)と思う疑がいが、また姉小路卿の心に涌いた。

(この老獪な宰相殿と、あの清浄な簾子姫との間に、どんな関係があったのだろう?)

で、伊豆守の口から出る、次の言葉を待ち受けた。

伊豆守はポツポツと云った。

「その際わたくしは簾子姫と、お親しくしたのでございますよ……気高く美しい簾子姫と。……ただそれだけでございます。……さようそれだけではありまするが……簾子姫に対するわたくしの心――尊敬、崇拝、私淑、憧憬――恋! いやいやアッハッハッ……何んの何んの恋などと……で、爾来わたくしの心の中には、その後簾子姫におかせられては、どうしておられるやらと申すことばかりが……それにいたしてもご独身とは……しかも一度もお輿入れないとは……」