Clásicos japoneses con furigana
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よしとししゃせいちょう
芳年写生帖
野村 胡堂
Lee 芳年写生帖 (よしとししゃせいちょう) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 12.626 caracteres · 26 pantallas
絵師の誇り
絵師の誇り
霖雨と硝煙のうちに、上野の森は暮急ぐ風情でした。その日ばかりは時の鐘も鳴らず、昼頃から燃え始めた寛永寺の七堂伽藍、大方は猛火に舐め尽された頃までも、落武者を狩る官兵の鬨の声が、遠くから、近くから、全山に木精を返しました。
「今の奴、何処へ逃げた」
「味方を四五人騙し討ちに斬って居るぞ。逃してはならぬ奴だ」
「まだ遠くへは行くまい」
「見付かったら、朋輩の敵、一と太刀ずつ斬るのだぞ」
背負太刀、ダン袋、赤い飾毛をなびかせた官軍が五六人、木立を捜り、藪を分けて鶯谷の方へ降りて行きます。
その背後から、物の影のように現われたのは、彰義隊士日下部欽之丞、二十四五の絵に描いたような美男ですが、軽傷を受けた上、幾人か斬った返り血が、乱鬢と、蒼い頬と、黒羽二重を絞った白襷に反映して、凄まじさというものはありません。
「――――」
不敵な舌鼓を一つ、四辺を見廻した欽之丞は、又も近づく人影に驚いて、木立の蔭に身を潜めました。
「畜生ッ、――俺は怪しい人間じゃねえ」
血の臭いに酔って、無暗に吠え付く犬を叱り乍ら、桐油をすっぽり冠って、降りしきる細雨の中をやって来たのは、絵師の月岡米次郎こと、大蘇芳年の一風変った姿です。