Clásicos japoneses con furigana
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きくやしき
菊屋敷
山本 周五郎
Lee 菊屋敷 (きくやしき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 36.620 caracteres · 71 pantallas
のうろたえた姿に眼を向けた。
「そうだ、妹もわたしも二の次ぎだ、肝心なのは晋太郎の今後だ」少しずつ鎮まりかけた気持で、しずかに志保はそう呟やいた、「……晋太郎がものの役に立つ武士に成って呉れるなら、自分の失望や悲しみなどは問題ではない、大切なのは晋太郎だけだ、晋太郎をもっとも良く育てる方法、それが第一だ」
そしてそれを中心にしてもういちど考え直してみた。自分は今日まで質実に剛毅にと育ててきた、衣服も食事もできるかぎりつつましく、起居の行儀も正しく、常に「武士」という観念を基礎づけるよう注意を怠らなかった。万全をつくしたとは云えないまでも、その努力を忘れたことはないと信ずる。……小松は実の母親である、いかに自分がけんめいになっても、血を分けた母子の愛には及ばない、自分が百の努力をしても実の母親の愛の一には及ばないだろう、しかしそれはその愛が正しくある場合のことだ、実母の愛がいかに強く真実であろうと、正しい方向のない、盲いたものであったら却って子を誤まるだけである、――晋太郎を返して、という小松の叫びは悲痛だ、誇りも意地もかなぐり棄て、素裸になった母の哀訴である、しかしそれが晋太郎を正しく育てる愛であるかどうか、子の将来を想うよりも、おのれの愛に溺れているのではないかどうか。