Clásicos japoneses con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lee 虞美人草 (ぐびじんそう) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 198.559 caracteres · 401 pantallas
――小野さんは自分の考に間違はないはずだと思う。人が聞けば立派に弁解が立つと思う。小野さんは頭脳の明暸な男である。
ここまで考えた小野さんはやがて机の上に置いてある、茶の表紙に豊かな金文字を入れた厚い書物を開けた。中からヌーボー式に青い柳を染めて赤瓦の屋根が少し見える栞があらわれる。小野さんは左の手に栞を滑らして、細かい活字を金縁の眼鏡の奥から読み始める。五分ばかりは無事であったが、しばらくすると、いつの間にやら、黒い眼は頁を離れて、筋違に日脚の伸びた障子の桟を見詰めている。――四五日藤尾に逢わぬ、きっと何とか思っているに違ない。ただの時なら四五日が十日でもさして心配にはならぬ。過去に追いつかれた今の身には梳る間も千金である。逢えば逢うたびに願の的は近くなる。逢わねば元の君と我にたぐり寄すべき恋の綱の寸分だも縮まる縁はない。のみならず、魔は節穴の隙にも射す。逢わぬ半日に日が落ちぬとも限らぬ、籠る一夜に月は入る。等閑のこの四五日に藤尾の眉にいかな稲妻が差しているかは夢測りがたい。論文を書くための勉強は無論大切である。しかし藤尾は論文よりも大切である。