Clásicos japoneses con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lee 虞美人草 (ぐびじんそう) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 198.559 caracteres · 401 pantallas
「御前が、どうしても承知してくれなければ、そうするよりほかに道はあるまい」
云い終った母は悄然として下を向いた。同時に忰の紙の上に三角が出来た。三角が三つ重なって鱗の紋になる。
「母かさん。家は藤尾にやりますよ」
「それじゃ御前……」と打ち消にかかる。
「財産も藤尾にやります。私は何にもいらない」
「それじゃ私達が困るばかりだあね」
「困りますか」と落ちついて云った。母子はちょっと眼を見合せる。
「困りますかって。――私が、死んだ阿父さんに済まないじゃないか」
「そうですか。じゃどうすれば好いんです」と飴色に塗った鉛筆を洋卓の上にはたりと放り出した。
「どうすれば好いか、どうせ母さんのような無学なものには分らないが、無学は無学なりにそれじゃ済まないと思いますよ」
「厭なんですか」
「厭だなんて、そんなもったいない事を今まで云った事があったかね」
「有りません」
「私も無いつもりだ。御前がそう云ってくれるたんびに、御礼は始終云ってるじゃないか」
「御礼は始終聞いています」
母は転がった鉛筆を取り上げて、尖った先を見た。丸い護謨の尻を見た。心のうちで手のつけようのない人だと思った。