Clásicos japoneses con furigana
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はえおとこ
蠅男
海野 十三
Lee 蠅男 (はえおとこ) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 118.129 caracteres · 237 pantallas
丁度その九時ごろ、一台の大型の自動車が門内に滑りこんでいった。乗っていたのは、年のころ五十に近い相撲取のように巨大な体躯の持ち主――それこそこの邸の主人、玉屋総一郎その人だった。
車が玄関に横づけになると、彼はインバネスの襟をだらしなく開けたまま、えっと懸け声をして下りたった。
「あ、お父つぁん」
家の中からは、若い女の声がした。しかしこの声は、どうも少し慄えているらしい。
「糸子か。すこし気を落ちつけたら、ええやないか」
「落ちつけいうたかて、これが落ちついていられますかいな。とにかく早よどないかしてやないと、うち気が変になってしまいますがな」
「なにを云うとるんや。嬰児みたよに、そないにギャアつきなや」
総一郎はドンドン奥に入っていった。そして二階の自分の書斎の扉を鍵でガチャリと開けて、中へ入っていった。、そこは十五坪ほどある洋風の広間であり、この主人の好みらしい頗る金の懸った、それでいて一向垢ぬけのしない家具調度で飾りたて、床には剥製の虎の皮が三枚も敷いてあり、長椅子にも、熊だの豹だのの皮が、まるで毛皮屋に行ったように並べてあった。
玉屋総一郎は、大きな机の前にある別製の廻転椅子の上にドッカと腰を下ろした。