Clásicos japoneses con furigana
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かわぐちこ
野菊の墓他六篇
伊藤 左千夫
Lee 野菊の墓他六篇 (かわぐちこ) de 伊藤 左千夫 (いとうさちお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 30.105 caracteres · 61 pantallas
やがて霧がおおいかくしそうなようすだ。予は高い声で、
「あそこはなんという所かい」
「ヘイ、あっこはお石でござります。あれでもよっぽどな一村でござります。鵜島はあのまえになります、ヘイ。あれ、いま鳥がひとつ低う飛んでましょう。そんさきにぽうっとした、あれが鵜でござります。まだ小一里でござりましょう」
いよいよ霧がふかくなってきた。舟津も木立ちも消えそうになってきた。キィーキィーの櫓声となめらかな水面に尾を引く舟足と、立ってる老爺と座しておる予とが、わずかに消しのこされている。
湖水の水は手にすくってみると玉のごとく透明であるが、打見た色は黒い。浅いか深いかわからぬが深いには相違ない。平生見つけた水の色ではない、予はいよいよ現世を遠ざかりつつゆくような心持ちになった。
「じいさん、この湖水の水は黒いねー、どうもほかの水とちがうじゃないか」
「ヘイ、この海は澄んでも底がめいませんでござります。ヘイ、鯉も鮒もおります」
老爺はこの湖水についての案内がおおかたつきたので、しばらく無言にキィーキィーをやっとる。予もただ舟足の尾をかえりみ、水の色を注意して、頭を空に感興にふけっている。