Clásicos japoneses con furigana
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ざっき(に)
雑記(Ⅱ)
寺田 寅彦
Lee 雑記(Ⅱ) (ざっき(に)) de 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 6640 caracteres · 14 pantallas
かれこれ半時間の余も見ていたが、いっこうに此方へは手を付けない。自分の周囲で見ている連中にもやはりそれが気になるらしい事を云い合っているのがあった。私は自分が子供の時に九段上の広場で見た、手拭を撚ってこしらえた蛇を地上において、それが今に本当の蛇になると云って、その周囲に円を描いて歩きながら、笛を吹いて往来の暇人を釣っていた妙な男の事を思い出した。そしてその昔の心持と今のとどこか似通ったものを捜りあてて、思わず微笑したのであった。
しかしとうとう、そのいちばん大きな筒が装填される時が来た。「今度は大きいぞ大きいぞ」と云う声が、群衆の中で、そこからもここからも起った。
かなり大きな音と共に飛び出した弾は、風の音を立てて昇って行って、突然開いた。
何が出るかと思って、緊張している、大勢の頭上の空中に、一団の大きな黄黒色のボアのような煙の団塊が一つ出来た。そしてただそれだけであった。煙は次第次第に乱れて拡散して、やがてただ一抹の薄い煙になってやがて消えてしまった。
花火船の艫にしゃがんでいた印半纏の老人は、そこに立ててあった、赤地に白く鍵屋と染め出した旗を抜いて、頭の上でぐるぐると大きく振り廻した。