Clásicos japoneses con furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lee 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 145.414 caracteres · 289 pantallas
大声に笑い罵るのである。しかも種彦の眼には数知れぬ夜鷹の顔がどうやら皆一度はどこかで見覚えのある女のように思われた。恐ろしいやら気味悪いやら、種彦は狂気の如く前後左右に切退け切払い、やっとの事で橋の向うへと逃げのびたが、もう呼吸も絶え絶えになるばかり疲れ果て有合う捨石の上に倒るるように腰を落した。
幸い四辺は静で、もう此処までは追掛けて来るものもないらしい。朧月の光が軟に夜の流を照している。種彦は初めてほっと吐息を漏し、息切れのする苦しさに石垣の下なる杭につかまり身を這わせるようにして掌に夜の流を掬上げようとすると、偶然にも木の葉のように漂って来る一箇の杯。今の世に何人の戯れぞ。紀文が杯流しの昔も忍ばるる床しさと思う間もなく、早や二、三艘の屋根船が音もなく流れて来て石垣の下なる乱杭に繋がれているではないか。閉切った障子の中には更に人の気勢もないらしいのに唯だ朗かに河東節「水調子」の一曲が奏られている。種彦は先ほどの恐ろしい光景をも全く忘れてしまい今は何という訳もなく二十歳の若い姿を朧夜の河岸に忍ばせて、ここに尋ね寄る恋人を待構えるような心持になっていた。