Clásicos japoneses con furigana
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おに
鬼
江戸川 乱歩
Lee 鬼 (おに) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 30.138 caracteres · 60 pantallas
狼? イヤ、なんぼ山家でも、こんなところへ狼が出る筈はない。山犬に違いない。だが、あの口はどうしたのだ。唇も舌も白い牙さえも、生々しい血に濡れて、ピカピカ光っているではないか。茶色の毛の全身が、ドス黒く血の斑点だ。顔も血みどろのブチになって、その中から燐光を放つ丸い眼が、ジッとこちらを睨んでいる。顎からは、まだポタポタと血のしずくが垂れている。
「山犬だよ。土竜かなんかやッつけたんだよ。逃げない方がいい、逃げると却て危いから」
流石に大宅は山犬に慣れていた。
「チョッ、チョッ、チョッ」
彼は舌を鳴らしながら、怪物の方へ近づいて行った。
「なあんだ。知ってる奴だよ。いつもこの辺をウロウロしているおとなしい奴だよ」
先方では大宅を知っていたのか、やがて血みどろの山犬は、ノソノソと樹の蔭を出て、二三度彼の足元を嗅いだかと思うと、森の奥へと駈込んで行った。
「だが君、土竜やなんか喰ったんで、あんな血みどろになるだろうか。変だぜ」
殿村はまだ青ざめていた。
「ハハハ……、君も臆病だね。まさかこんなところに、人喰いの猛獣はいやしないよ」
大宅は何を馬鹿馬鹿しいと云わぬばかりに笑って見せたが、実は案外そうでなかったことが、間もなく分った。