Clásicos japoneses con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lee 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 262.100 caracteres · 523 pantallas
と。さすがに鉄壁のような欅張りも、ようやく、眸の覗かれるぐらいな穴が彫れた。サクリッ……とえぐりこんだ短刀の肌に、淡明りがだんだんと濃くなった。
そこで、お綱は、初めて、しぼるような汗の冷々と肌をぬらしているのに、ホッと息をついて、乱れ毛を耳の根へなでつけたのである。
「誰だろう? こんな所に住んでいるのは」
初めて、疑惑をもつだけの余裕がでた。匕首の刃を手裏にして、ジッとえぐりこんだ穴へ眼をあてて覗いてみると、――おお、まさしく、そこには、お綱の想像もしなかった景色が深沈と、不可思議なる夜の底に沈まれてあったのだ。
どうだろう!
そこにはありありとして二人の婦人がいたのである。
部屋は、お綱のいる所の、暗たんたる板と柱の穴蔵と違い、普通と変らぬ部屋づくり、むしろ、美々しい結構である。
金砂子の袋戸棚、花梨の長押、うんげんべりの畳――そして、淡き絹行燈の光が、すべてを、春雨のように濡らしている……。
その床の間に向って、たけた一人の女性が黒々とした髪をうしろにすべらかし、ジッと合掌したまま、作りつけた人形のごとく、或いはこの部屋のまま、この灯かげのともったまま、ミイラになっているのではないか? ……と思われるほど、動かずにいるのである。