Clásicos japoneses con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lee 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 262.100 caracteres · 523 pantallas
御手洗に張った薄氷を割って、小柄杓に水を掬ったのである。
気はいらいらと急きながら、掬って来た柄杓の水をこぼさぬように、お綱は小刻みに戻ってきた。
赤い空から地の闇へ、火の粉がバラバラと降ってくる――。火事はまだまださかんらしい。神田川は夕焼のようだ。
「あっ……」
柄杓の水がこぼれてしまった。
お綱の足もとへ、何かフワリとした物が、絡みついてよろけたので――。
常夜燈の前だった。淡い明りが流れているので、ヒョイと見ると、それは、自分の着ていた江戸紫の被布であった。
「こんな所へ落したのか……」と、お綱は一目に思ったが、もとよりそれを拾う気はなく、小柄杓を持ってもう一度、水を掬いに戻りかけた。
すると、その時だ。
ここに落ちていた被布を見て、先ほどから、しきりに人の気配を探っていたお十夜孫兵衛が、常夜燈のうしろからヌッとうねりだして、
「むッ! ……」
物もいわずに、お綱の襟をつかんでしまった。
「あっッ」と、お綱。
右手に持っていた小柄杓で、驚きの力任せに、かれの真眉間を狙ってヒュッと打った。
さッと、身をかわされて柄杓の首は、お十夜の柄に当ってパキンと割れる!