Clásicos japoneses con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lee 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 262.100 caracteres · 523 pantallas
そこへ一人の男が立った。
「あい、お泊り様で……」宿の女中が出てみると、土間に突っ立った男は、べんけい縞の尻はしょり、笠の前つばを抑えているので人相は分らない。
「うんにゃ、泊るわけじゃねえ。――ちょっとここの客に言伝て貰いたいのだが、昨日なんだろう、……あのドシャ降りがやってきた時、頭巾をかぶった浪人と小粋な女が、ここの家へ、駈けこんできたろう」
「はい、お泊りでございますが」
「その女の人に、これを渡してくンな。昨日、走井の茶屋の前で拾いました、おおかたあなたが落したものと思って、ついでに持って上がりました……とな。いいか、忘れちゃいけねえよ」
懐から、妙な模様のついている一枚の札を出し、それを女中の手に渡して、
「だが、そいつはついでで、肝腎なのはこの次だぜ。ところで、この札を届けました男が、いつぞやは飛んだご恩をこうむりました。おかげ様で命拾いをいたしたようなもの、くれぐれもありがとうぞんじました……と、こうお礼をいって貰うんだ」
「それでは、ちょっとお呼び致しましょうか」
「おッと。逢うわけにはゆかねえんだ、外には連れも待っているから、今いったことだけを頼んだぜ」