Clásicos japoneses con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
Lee 鳴門秘帖 (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 56.957 caracteres · 114 pantallas
この国へきてから、しばらく忘れていた血痰が、胸のどこかに、時機を待って鬱滞しているのではないかというような神経を起こしたりした。
「陰気だな、この中は」
「早くお話をして、私は、今日のうちに御城下へ帰ります。こんな所に、一晩夜を明かしてはいられません」
「ばかを申せ、今頃から帰れるものか」
「でも、いたたまれやしませんもの」
「一体、何用があってまいったのだ。こういう山家ということを存じながら、来たほうが悪いではないか」
「実は、急に、お願いがありまして……」
「また、大阪へやってくれということか」と苦ッぽい声の下から、針のような筋が啓之助の眉に立った。
「エエ……」
先にいわれてしまったので、お米はうつむきながら、かすかに、哀れッぽい声をかすらせた。そして、来る途中で巧みに織ってきた作りごとが、グッと喉につかえてしまった。
「何度いおうと、いけないといった以上、ゆるすことはできないのじゃ。もう四、五年もたったらやってくれる、それまでは大阪へ帰ることはならぬ」
「帰るとおっしゃいますけれど、決して、もう、大阪へ行って、戻らないというのではございません、すぐにまた阿波へ」