Clásicos japoneses con furigana
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てらだとらひこ
黄道
和辻 哲郎
Lee 黄道 (てらだとらひこ) de 和辻 哲郎 (わつじてつろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 28.971 caracteres · 59 pantallas
で、たぶん三時半か四時ごろであったと思うが、自分は鉄道の踏切へ出掛けて行って、東京の方からぞろぞろ帰って来る人に火事の様子を聞こうとした。するとそこの踏切番の爺が通る人から聞いたことを伝えてくれた。神田が大火である。日比谷も盛んに燃えている。日本橋、浅草、本郷、麹町なども燃えている。あの雲は火事の煙であると。
自分が大火に愕然としたのはこのときである。なるほどあの入道雲は火事の煙かも知れない。これは容易ならざる大火である。水道には水がない。消すことはできぬ。どこまで燃えひろがるか解らない。――が、こう思いながらも、まだ自分は、大火があれほど猛烈なものとは考え得なかった。堀があるところでは留まるであろう、不燃性の建物は焼けないであろう、というふうな気持ちであった。
このころからおいおい火事の噂が伝わって来た。須田町を中心に四方八方に燃えひろがっている、警視庁や帝劇が燃えつつある、本郷の大学が焼けた、などと、我々は半信半疑でその噂をきいた。が一方では地震に脅かされているために、歩いて火事場まで確かめに行ってみようという気も起こらなかった。ただ入道雲のような火事の烟を仰ぎ見てなんともいえない不安な気持ちに閉ざされていた。