Clásicos japoneses con furigana
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くろゆり
黒百合
泉 鏡花
Lee 黒百合 (くろゆり) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 78.148 caracteres · 154 pantallas
框に人の跫音がしたが、慌しく奥に来て、壮な激しい声は、沈んで力強く、
「遁げろ、遁げねえか、何をしとる!」
お雪は薄暗い燈の影に、濡れしおれた髪を振って、蒼白い顔を上げた。理学士の耳にも正に滝太郎の声である、と思うも疾しや!
「洪水だ、しっかりしろ。」
お雪は半ば膝を立てて、滝太郎の顔を見るばかり。
「早くしねえかい、べらぼうめ。」と叱るがごとくにいって、衝と縁側に出た、滝太郎はすっくと立った。しばらくして、あれといったが、お雪は蹶起きようとして燈を消した。
「周章てるない、」といって滝太郎は衝と戻って、やにわにお雪の手を取った。
「助けてい!」と言いさまに、お雪は何を狼狽えたか、扶けられた滝太郎の手を振放して、僵れかかって拓の袖を千切れよと曳いた。
六十
お雪は曳いて、曳き動かして、
「どうしましょう、あれ、早く貴方、貴方。」
拓は動じないで、磐石のごとく坐っているので、思わず手を放して、一人で縁側へ出たが、踏辷ったのか腰を突いた。しばらくは起きも得なかったが、むっくと立上ると柱に縋って、わなわなと顫えた。ただ森として縁板が颯と白くなったと思うと、水はひたひたと畳に上った。