Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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おばなさわ

おばな沢

山本 周五郎

Lee おばな沢 (おばなさわ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 22.479 caracteres · 45 pantallas

Aozora Bunko

六

その日は一日じゅう唇が気になった。いくら拭いてもそこが濡れているようで、別に汚いという感じではなく、ただきみが悪くてしかたがなかった。だがそれより気になったのは、相良が尾花沢の総支配だということである。そんなこともあるまいが、いわば二人は恋がたきで、感情のもつれや疎隔はまぬかれないであろう、ことに場所がそんな場所だから、どんな機会にまちがいが起るかもしれない。

――相良という人はそんな人ではない、そんなことを根にもって相手をおとしいれるような、めめしい人では決してない。

節子は自分でこう慰めながら、それでも数日はともすると不安におそわれ、躯の調子もずっといけなかった。

六

兄が横目附になったのは十月で、それを機会にかねて婚約ちゅうの人と結婚をし、にわかに家の中が賑やかになった。向うは次席家老の茶谷忠右衛門という人の二女で、名を宇知といい年は節子より二つ下の十七だった。大柄なふっくらした躯つきで、年を聞かなければ十九か二十くらいにみえる。気性も明るく、一日じゅうどこかで笑いごえが聞えるというふうだった。

そういうごたごたが影響したものか、節子はその月末に血を吐き、十日あまり口もきけないほど病気が悪化した。