Clásicos japoneses con furigana
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おじぎ
お時儀
Lee お時儀 (おじぎ) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 4067 caracteres · 9 pantallas
保吉は三十になったばかりである。その上あらゆる売文業者のように、目まぐるしい生活を営んでいる。だから「明日」は考えても「昨日」は滅多に考えない。しかし往来を歩いていたり、原稿用紙に向っていたり、電車に乗っていたりする間にふと過去の一情景を鮮かに思い浮べることがある。それは従来の経験によると、たいてい嗅覚の刺戟から聯想を生ずる結果らしい。そのまた嗅覚の刺戟なるものも都会に住んでいる悲しさには悪臭と呼ばれる匂ばかりである。たとえば汽車の煤煙の匂は何人も嗅ぎたいと思うはずはない。けれどもあるお嬢さんの記憶、――五六年前に顔を合せたあるお嬢さんの記憶などはあの匂を嗅ぎさえすれば、煙突から迸る火花のようにたちまちよみがえって来るのである。
このお嬢さんに遇ったのはある避暑地の停車場である。あるいはもっと厳密に云えば、あの停車場のプラットフォオムである。当時その避暑地に住んでいた彼は、雨が降っても、風が吹いても、午前は八時発の下り列車に乗り、午後は四時二十分着の上り列車を降りるのを常としていた。なぜまた毎日汽車に乗ったかと云えば、――そんなことは何でも差支えない。