Clásicos japoneses con furigana
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そのきどをとおって
その木戸を通って
山本 周五郎
Lee その木戸を通って (そのきどをとおって) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 22.448 caracteres · 44 pantallas
「わたくしどうしたのでしょう」
「こんなに冷えてしまった」彼は妻の背を撫でながら云った、「風邪をひくといけない、ここでいっしょに寝ておいで」
「わたくしなにか致しまして」
「なんでもないよ」彼は自分の夜具の中へ妻と横になり、じっと抱き緊めながら云った、「なにもしやあしない、夢をみていただけだ」
ふさは良人の腕の中で頷き、まもなく静かな寝息をたてて眠った。
――躯の変調のためだ。
妊娠したために、躯の調子が狂ったのであろう。正四郎はそう思ったが、その夜の出来事は忘れられなかった。ふさは紛れもなく過去のことを思いだしたのだ。寝間をこっちへ出て、廊下のここに杉戸があって、――そう呟きながら首をかしげていた姿は、まえに住んでいた家の間取を思いだしたのに相違ない。そして、あの面変りのした顔と、他人を見るような冷やかな眼、――あのとき妻は過去の中にいたのだ。そんなことはないと、いくら否定してみても、自分の直感した事実は動かしようがなかった。
「いつかまた同じようなことが起こる」と彼は呟く、「こんどはもっとはっきりと、過去のすべてを思いだすかもしれない」
家にいても、登城していても、当分はそのことが頭から去らず、夜半に眼をさまして、そっと妻の寝所を覗いたことも幾たびかあった。