Clásicos japoneses con furigana
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たねこのゆううつ
たね子の憂鬱
Lee たね子の憂鬱 (たねこのゆううつ) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 3606 caracteres · 8 pantallas
」
「そりゃするわ。すると思ったわ。あたしもゆうべは怖い夢を見た。……」
「どんな夢を?――このタイはもう今年ぎりだね。」
「何か大へんな間違いをしてね、――何をしたのだかわからないのよ。何か大へんな間違いをして汽車の線路へとびこんだ夢なの。そこへ汽車が来たものだから、――」
「轢かれたと思ったら、目を醒ましたのだろう。」
夫はもう上衣をひっかけ、春の中折帽をかぶっていた。が、まだ鏡に向ったまま、タイの結びかたを気にしていた。
「いいえ、轢かれてしまってからも、夢の中ではちゃんと生きているの。ただ体は滅茶滅茶になって眉毛だけ線路に残っているのだけれども、……やっぱりこの二三日洋食の食べかたばかり気にしていたせいね。」
「そうかも知れない。」
たね子は夫を見送りながら、半ば独り言のように話しつづけた。
「もうゆうべ大しくじりをしたら、あたしでも何をしたかわからないのだから。」
しかし夫は何とも言わずにさっさと会社へ出て行ってしまった。たね子はやっとひとりになると、その日も長火鉢の前に坐り、急須の湯飲みについであった、ぬるい番茶を飲むことにした。が、彼女の心もちは何か落ち着きを失っていた。