Clásicos japoneses con furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lee パンドラの匣 (パンドラのはこ) de Dazai Osamu (太宰 治) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 192.644 caracteres · 386 pantallas
兄さんがいなかったら、僕はいまごろ、凄い不良になっていたかも知れない。兄さんがしっかりしているから、お父さんも、あの世で、安心しているだろう。お母さんも、このごろ工合がよくなって、なんだか、もうすぐ全快するのではないかとさえ思われるくらいだ。うれしい事だ。僕がいなくなっても力を落さず、かならず、進の成功を信じて気楽にしていて下さい。僕は、決して堕落しません。かならず世に打ち勝ちます。いまに、うんとお母さんを喜ばせてあげます。さようなら。机よ、カーテンよ、ギタよ、ピエタよ。みんな、さようなら。泣かずに、僕の首途を笑って祝福しておくれ。
さらば。
四月四日。火曜日。
晴れ。僕はいま、九十九里浜の別荘で、とても幸福に暮している。きのう、兄さんに連れられてやって来たのだ。きのう午後一時二十三分の汽車で両国を立ち、生れてはじめての旅行のように窓外の風景を、胸をおどらせて絶えずきょろきょろ眺めていた。両国を立って、しばらくは、線路の両側にただ工場、また工場、かと思えばその間に貧しい小さい家が、油虫のように無数にかたまって建っている、と思うと、ぱらりと開けてわずかな緑地が見えてサラリイマンの住宅らしい赤瓦の小さな屋根が、ちらりほらり見える。