Clásicos japoneses con furigana
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ロザリオのくさり
ロザリオの鎖
永井 隆
Lee ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) de 永井 隆 (ながいたかし) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 107.351 caracteres · 213 pantallas
村医の門からとぼとぼと夕風の中を歩いてきた夫人がいきなり声をかけられて、はっと顔を上げると復員兵、しかもビルマでわが子と同じ隊にいた青年であった。夫人は復員兵の固い表情をじっと見つめていたが、どきんと胸をつく予感があった。彼の口の動くのが恐ろしくなって何か逃げ出したい気分になった。青年は何度か口を動かしかけてはためらった。夫人の顔は次第に硬くなった。青年の目からぽろりと涙があふれた。それで夫人はいっさいを知ったのである。
あと三か月しかこの世にいない夫の耳に子の戦死を入れないでおこう。どうせあの世へ行ったら対面することだからと、夫人はとっさに心を決めて、青年に向かい口止めを頼んだ。それから村長の宅へまわって、公報が来ても役場であずかって知らせないでおいて欲しいと頼んだ。──けれどもこういう話はどこからともなく広がるものである。
神官が死病にかかっていることも息子の戦死もいつのまにか村中に知れ渡ってきたので、この真相を本人に知らせぬただ一重の幕の役をつとめる夫人の心労は並たいていではなかった。ただ一言誰かが口をすべらせたら万事休すである。どこからか悔やみ状が一枚来たらおしまいである。