Clásicos japoneses con furigana
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さんじゅうにこく
三十二刻
山本 周五郎
Lee 三十二刻 (さんじゅうにこく) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 15.273 caracteres · 31 pantallas
こういう襲撃に寄手が火を使うことは定法である。図書はじめ誰もそれに気付かなかったのは初めから必死を期していたからでもあるが、若い宇女がその手配をしたという事は図書の心を強くうった。
ずしん……ずしん。ずしん……ずしん。
鈍く重い響音、三ヶ所で築地塀を突き崩す緩慢な重苦しい響きは、打物の音と叫喚とを圧倒して屋敷いっぱいに広がった……この三ヶ所の崩壊する時が、疋田一家の討死をする期である。家士たちの眼にも、今やその時の近づきつつあることがはっきりと表れていた。
橋田藤吉、速水数馬(左右助の弟)、和下軍兵衛の三人が走ってきた。彼等は縁下に揃って片膝をつきながら、
「開門をお許しください」
と叱りつけるような声で叫んだ。
「踏込まれて、お屋敷内で死ぬのは残念です。斬って出ることをお許しください」
「築地はもはや四半刻も保ちません。寄手はすぐ踏込んでまいります」
「お許しください」
「斬って出させてください」
「ならん!」
図書は押切って叫んだ。
「まだその期ではない。持場へ帰って下知を待て、死ぬ時は図書が先途をする。急ぐな」
三人は歯噛みをしながら走去った。
すると間もなく、書院の正面に当る塀の中へ、外から燃えさかる松明をばらばらと投入れてきた。