Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ふしゅう

俘囚

海野 十三

Lee 俘囚 (ふしゅう) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 14.938 caracteres · 31 pantallas

Aozora Bunko

トントンと、長い廊下の上に、あたしの跫音がイヤに高く響く。薄ぐらい廊下灯が、蜘蛛の巣だらけの天井に、ポッツリ点いている。その角を直角に右に曲る。――プーンと、きつい薬剤の匂いが流れて来た。夫の実験室は、もうすぐ其所だ。

夫の部屋の前に立って、あたしは、コツコツと扉を叩いた。――返事はない。

無くても構わない。ハンドルをぎゅっと廻すと、扉は苦もなく開いた。夫は、あたしの訪問することなどを、全然予期していないのだ。だから扉々には、鍵もなにも掛っていない。あたしは、アルコール漬の標本壜の並ぶ棚の間をすりぬけて、ズンズン奥へ入っていった。

一番奥の解剖室の中で、ガチャリと金属の器具が触れ合う物音がした。ああ、解剖室! それは、あたしの一番苦手の部屋であったけれど……。

扉を開けてみると、一段と低くなった解剖室の土間に、果して夫の姿を見出した。

解剖台の上に、半身を前屈みにして、屍体をいじりまわしていた夫は、ハッと面をあげた。白い手術帽と、大きいマスクの間から、ギョロとした眼だけが見える。困惑の目の色がだんだんと憤怒の光を帯びてきた。だが、今夜はそんなことで駭くようなあたしじゃない。