Clásicos japoneses con furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lee 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 160.664 caracteres · 323 pantallas
八山下の夜が更けて、品川の海の浪も静まり、高輪一帯の大名屋敷に、灯火一つまばたいてもいず、遠くで吠える犬の声や、手近で鳴らす拍子木の音が、夜の深さを思わせる頃、急ぎの用の旅人でもあろう、小田原提灯で道を照らし、二人連れでスタスタと、東海道の方へ歩いて行った。
と、木陰から人影が出た。
無紋の黒の着流しに、お誂い通りの覆面頭巾、何か物でも考えているのか、俯向きかげんに肩を落とし、シトシトとこっちへ歩いて来た。
と、双方行き違おうとした。
不意に武士は顔を上げた。
つづいて右手が刀の柄へ、……ピカリと光ったのは抜いたのであろう。「キャッ」という悲鳴。「ワーッ」と叫ぶ声。つづいて再び「キャッ」という悲鳴。……地に転がった提灯が、ボッと燃え上がって明るい中に、斃れているのは二つの死骸。……斬り手の武士は数間の彼方を、影のようにションボリと歩いていた。
他ならぬ鏡葉之助であった。
浅草の観世音、その境内の早朝、茶店の表戸は鎖ざされていたが、人の歩く足音はした。朝詣りをする信者でもあろう。
一本の公孫樹の太い幹に、背をもたせかけて立っているのは、編笠姿の武士であった。