Clásicos japoneses con furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Lee 名人地獄 (めいじんじごく) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 149.286 caracteres · 301 pantallas
「これは不思議、誰もいない」
気がついて自分の手もとを見た。そこでまた彼は「あっ」といった。空身であった彼の手が、変な物を持っていた。
「なんだこれは?」とすかして見たが、三度彼は「あっ」といった。今度こそ本当の驚きであった。彼の持っている変な物こそ、ほかでもない鼓であった。それも尋常な鼓ではない。かつて追分で盗まれた、家宝少納言の鼓であった。
「むう」思わず唸ったが、そのままじっと考え込んだ。
と、また人の足音がした。ハッと思って振り返った眼前へ、ツト現われた老武士があった。
「卒爾ながらおたずね致す」
「何んでござるな、ご用かな?」場合が場合なので銀之丞は、身構えをしてきき返した。
「只今ここへ怪しい人間、確かに逃げ込み参った筈、貴殿にはお見掛けなされぬかな?」
「見掛けませぬな。とんと見掛けぬ」
「それは残念、ご免くだされ」
いい捨て向こうへ駆け抜けようとしたが、幽かな常夜燈の灯に照らし、銀之丞の持っている鼓を見ると、飛燕のように飛び返って来た。
銀之丞の手首をひっ掴むと、「曲者捕った……鼓! 鼓!」
「黙れ!」と銀之丞は一喝した。「鼓がどうした? 拙者の鼓だ!」