Clásicos japoneses con furigana
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へんなおとこ
変な男
豊島 与志雄
Lee 変な男 (へんなおとこ) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 40.508 caracteres · 81 pantallas
辰代は呆気にとられた風で、一寸言葉もなかったが、それなら兎も角も上って待っていて下さいと、ほんのお座なりに勧めてみた。
「そうですか、それじゃ失礼します。」
躊躇もせずにのこのこ上りこんで、入口に近い片隅に坐り、角帽を傍に引きつけて、きちんとかしこまった。その様子が何だか滑稽じみていたので、辰代は一寸待遇してやる気になった。そして座布団と茶と菓子とをすすめた。然し彼はそれらには手もつけなかった。
「どうぞお構いなく。」
そう云ったきりで、狭い庭の方をじっと眺めていて、一応室を見るようにと云われても、端坐した膝を立てようともせずに、黙りこくっていた。
「お国はどちらでいらっしゃいますか。」と、辰代は語の接穂がないので尋ねてみた。
「鹿児島です。」と、彼は答えた。「鹿児島はいい処ですよ。」
そして彼は自ら進んで、鹿児島の風光明媚を説き出した。どの川の水もみな透明に澄みきっていて、一丈二丈ほどもある淵でさえ、底まで手にとるようで、魚の泳いでるのがはっきり見えて、釣をするのなんか実に愉快である。随って、そういう川の水の流れ込む海が、やはり底まで澄んでいて、魚の姿と一緒に桜島の影の写ってるのが、云いようもないほど綺麗である。