Clásicos japoneses con furigana
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
Lee 夜光虫 (やこうちゅう) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 66.871 caracteres · 134 pantallas
「今や……」
次郎は眼の前がぽうっと霞んだ。そして何もかも無我夢中だったが、はっと気がつくと、
「こいつッ!」
と、針助の声を水のように浴びていた。
次郎の手は針助に握られていた。
「あっ!」
と、驚いたのは、次郎よりも三郎の方だった。
三郎はものも言わずに駈け出そうとした。
が、針助の手はいきなり伸びて三郎の首筋を掴んでしまった。
「お前もやな……?」
「…………」
「お前も来い!」
針助は次郎と三郎を両手でひきずるようにして、電車に乗せてしまった。
――咄嗟の間の出来事だった。
電車は案外混んでいなかった。
針助はあいた席を見つけて、次郎と三郎を自分の両脇に坐らせた。
次郎と三郎はそれぞれ片手を針助にぐっと握られながら、死んだようにぐんにゃりとなっていた。
日本橋筋一丁目を過ぎたのも知らなかった。
生魂の石の鳥居のある下寺町を過ぎたのも知らなかった。
下寺町の暗い焼跡の坂を、登って行くと、やがて電車は上本町六丁目に着いた。
「ここや」
針助は次郎と三郎をうながして、出口の方へ行くと、次郎をつかまえていた右手を離して、金を払おうとした。
「逃げるンやったら今や」