Clásicos japoneses con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lee 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 508.883 caracteres · 1017 pantallas
悲母悲心
一
清水寺のわきの山道をかなり登って来たのである。しかし婆は、息が喘れたともいわない。
「――伜、伜」
そこの堂の前に立つと、すぐ闇へこう呼ぶ。
顔つきにも、声にも、真実の愛情がふるえていた。後ろに立っているお通には、べつな老婆のように思えた。
「お通、提燈を消すなよ」
「はい……」
「いない、いない」
婆は、口のうちで呟きながら、そこらを繞り歩いて、
「手紙には、地主権現まで来てくれとあったが」
「今夜と書いてございましたか」
「きょうとも明日ともしてないのじゃ、幾歳になってもあの子ときては子供じゃでのう。……それより自分で旅宿へ来ればよいに、住吉のこともあるので、間がわるいのじゃろ」
お通は袂を引っぱって、
「お婆様、又八さんではありませんか。――誰か下から登って来るようです」
「エ、いたか」
崖の道をさし覗いて、
「伜――」
やがて登って来た者は、そういうお杉婆には目もくれないで、地主権現の裏へ廻り、またそこへ戻って来ると、立ちどまって、提燈の明りの上に浮いているお通の白い顔を、不遠慮な眼でじっと見る。
――お通は、はっと思ったが、先は何も感じない顔つきである。