Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ろうじゅうのめがね

小笠原壱岐守

佐々木 味津三

Lee 小笠原壱岐守 (ろうじゅうのめがね) de 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 57.249 caracteres · 115 pantallas

Aozora Bunko

「もうかえるんだよ」

「……? あ、そうか。花は散ったか」

ふらりと立ちあがって、平七は、こともなげな顔をし乍ら、のそのそとおりていった。

水にも土手にも、しっとりと闇がおりて、かすかな夜露が足をなでた。

どこにいるのか、暗いその川の中で、ギイギイと櫓が鳴った。

充ち足りたらしく新兵衛が、上機嫌な声で、暗い土手の闇の中からせき立てた。

「貴公どっちへかえるんじゃ」

「うん……」

「うんじゃないよ。なにをそんなところでぼんやりしておるんじゃ」

「うん……。なるほどこのあたりは、むかし通り深そうじゃな。だぶりだぶりと水が鳴っているよ」

「つまらんことを感心する奴じゃ。ぼんやりしておったら置いてゆくぞ」

不意にうしろで、リンリンと、簪が鳴った。

恥しそうに襖の奥へかくれ乍ら、顔も見せなかったのに、いつのまにかこっそりと新兵衛を送って来ていたとみえて、ためらい、ためらい、あの小娘が花簪の音を近づけると、土手ぎわにしょんぼりと立っている平七の黒い影を、じっと見すかし乍ら、なにか言いたそうに、暫くもじもじとしていたが、

「わるかったのね。あなたばかりひとりぽっちにしておいて、それがお寂しかったから、そんなに悲しそうにしておいでなのでしょう。