Clásicos japoneses con furigana
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やまへかえりゆくちち
山へ帰りゆく父
小川 未明
Lee 山へ帰りゆく父 (やまへかえりゆくちち) de 小川 未明 (おがわみめい) en japonés con furigana. JLPT N3. Toca una palabra para ver el significado.
N3 · intermedio · kanji y kana modernos · 7875 caracteres · 16 pantallas
息子は、自分の生まれた、古い家の中へはいりました。すると、いろいろの思い出が、そのままよみがえってくるのでした。壁板に書いた、子供の時分の楽器が、なおうすく残っています。よく鳥かごをかけた、戸口の柱の小刀の削り痕もそのままであります。雨の降る日には、土間で独楽をまわした。そして、よく、かち当てた敷石もちゃんとしていました。なにもかも、昔のままであったのであります。
息子は、ぼんやりとした気持ちで、二、三日は過ごしてしまいました。
「お父さんは、都へおいでになりませんか。」と、息子は、いいました。
「いや、どうして、この長く住み慣れた家を、捨ててゆけよう。」と、父親は、頭を振りました。
「おまえこそ、ここへ帰ってきて、いっしょに暮らしたがいい。」と、父親は、息子に向かっていいました。
息子は、都に残してきた、仕事のことを思い出しました。そして、どうしても都に帰らなければなりませんでした。
二人は、たがいに別れて暮らさなければならないのを悲しく思いました。
「これは、おまえが子供の時分に、裏の庭さきで拾って大事にしていた石だ。」と、父親はいって、床の間の台の上に乗せてあった黒い石を取りあげて、息子に見せました。