Clásicos japoneses con furigana
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あるおんなのしょうがい
嵐・ある女の生涯
島崎 藤村
Lee 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 47.846 caracteres · 96 pantallas
小さな犬のくせに、どうしてそんな人間の淫蕩の秘密を覚えたかと思われるような奴だ。亡くなった旦那が家出の当時にすら、指一本、人にさされたことのないほど長い苦節を守り続けて来た女の徳までも平気で破りに来ようという奴だ。そう考えると、おげんはこの養生園に居ることが遽に恐ろしくなった。夕方にでもなって、他の患者が長い廊下をあちこちと歩いている時に、養生園の庭の見える硝子障子のところへ立って見ると、「そんな犬なんか居ませんよ」と言った看護婦の言葉は果して人をこまらせる悪戯と思われた。あの奥様の後をよく追って歩いて長い裾にまつわり戯れるような犬が庭にでも出て遊ぶ時と見えた。おげんは夢のような蒼ざめた光の映る硝子障子越しに、白い犬のすがたをありありと見た。
寒い、寒い日が間もなくやって来るように成った。待っても、待っても、熊吉は姉を迎えに来てくれなかった。見舞に来る親戚の足も次第に遠くなって、直次も、直次の娘も、めったに養生園へは顔を見せなかった。おげんは小山の家の方で毎年漬物の用意をするように、病室の入口の部屋に近い台所に出ていた。彼女の心は山のように蕪菜を積み重ねた流し許の方へ行った。