Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

Lee 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 365.120 caracteres · 728 pantallas

Aozora Bunko

しとしとと春の夜の小雨が煙っている。

ほどよく水を含んだ土は、足駄の歯にこころよい。

歩きたい晩である。

割り下水の方来居、相良玄鶯院の宅をあとにした篁守人は、愛刀帰雁を落とし差しに、片手に傘を傾けて、暗い裏町づたいに大川の縁へ出た。

埋堀のあたりらしい。

杭を洗って流れる黒い水が、ざぶうり、ざぶり――音を立てている。

対岸はお米蔵、屏風を立てならべたような甍が起伏しているなかに、火見櫓などが空明りに浮いて見える。

墨絵にはなろうが、淡いさびしさだ。

そのさびしさはやがてはっきりした形をとって、追っても払っても若い守人の胸をむしばむ。

雲のようにむらがり起こる恋情を、守人はどうすることもできないのだ。

思う女に思われる身は楽しいはず。現世にこれ以上の幸福はないかもしれない。

しかし、それは、思ってもいい女を思い、思われていい女に思われる場合に限る。思われてならない女に思われ、思ってならない女を思う守人の恋、そこに名刀帰雁でさえ断ち切れない哀愁と苦悩がある。思い思われていればそれでよいではないか、と考えてもみるが、こんなあきらめが何になろう。身と心を一筋に向けるのが恋の情感だ。