Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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まぼろしのたて

幻影の盾

夏目 漱石

Lee 幻影の盾 (まぼろしのたて) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 22.372 caracteres · 45 pantallas

Aozora Bunko

「盾の中に何をか見る」と女は水の向より問う。「ありとある蛇の毛の動くは」とウィリアムが眼を放たずに答える。「物音は?」「鵞筆の紙を走る如くなり」

「迷いては、迷いてはしきりに動く心なり、音なき方に音をな聞きそ、音をな聞きそ」と女半ば歌うが如く、半ば語るが如く、岸を隔ててウィリアムに向けて手を波の如くふる。動く毛の次第にやみて、鳴る音も自から絶ゆ。見入る盾の模様は霞むかと疑われて程なく盾の面に黒き幕かかる。見れども見えず、聞けども聞えず、常闇の世に住む我を怪しみて「暗し、暗し」と云う。わが呼ぶ声のわれにすら聞かれぬ位幽かなり。

「闇に烏を見ずと嘆かば、鳴かぬ声さえ聞かんと恋わめ、――身をも命も、闇に捨てなば、身をも命も、闇に拾わば、嬉しかろうよ」と女の歌う声が百尺の壁を洩れて、蜘蛛の囲の細き通い路より来る。歌はしばし絶えて弓擦る音の風誘う遠きより高く低く、ウィリアムの耳に限りなき清涼の気を吹く。その時暗き中に一点白玉の光が点ぜらるる。見るうちに大きくなる。闇のひくか、光りの進むか、ウィリアムの眼の及ぶ限りは、四面空蕩万里の層氷を建て連らねたる如く豁かになる。