Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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おもいでのき

思い出の記

小泉 節子

Lee 思い出の記 (おもいでのき) de 小泉 節子 (こいずみせつこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 30.841 caracteres · 62 pantallas

Aozora Bunko

『いつも先生に遇うと、何か一つ常談の出ない事はない』と申された方がございました。

面白い時には、世界中が面白く、悲しい時には世界中が悲しい、と云う風でございました。怪談の時でも、何の時でも、そうでしたが、もうその世界に入り、その人物になってしまうのでございました。話を聞いて感ずると、顔色から眼の色まで変るのでした。自分でもよく、何々の世界と、よく世界と云う言葉を申しました。

ヘルンの平常の話は、女のような優しい声でした。笑い方なども優しいのでしたが、しかし、ひどい意気込みになる人でしたから、優しい話のうちに、えらい勢で驚くように力をこめて云う事がありました。

笑う時にも二つあります。一つは優しい笑方で、一つは何もかも打忘れて笑うのです。この笑は一家中皆笑わせる面白そうな笑で、女中までが貰い笑を致しました。大学を止めた当時、日本に駐在でしたマクドーナルドさんが横浜から毎日曜毎に御出でになりました時などは、書斎からヘルンのこの笑声が致しますので、家内中どんなに貰い笑を致したか知れません。

書斎のテーブルの上に、法螺貝が置いてありました。私が江の島に子供を連れて参りました時、大層大きいのを、おみやげに買って帰ったのでございます。