Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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おんしゅうのかなたに

恩讐の彼方に

菊池 寛

Lee 恩讐の彼方に (おんしゅうのかなたに) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 22.824 caracteres · 46 pantallas

Aozora Bunko

が、非業に殪れた父の無念を思い、中川家再興の重任を考えると、奮然と志を奮い起すのであった。

江戸を立ってからちょうど九年目の春を、彼は福岡の城下に迎えた。本土を空しく尋ね歩いた後に、辺陲の九州をも探ってみる気になったのである。

福岡の城下から中津の城下に移った彼は、二月に入った一日、宇佐八幡宮に賽して、本懐の一日も早く達せられんことを祈念した。実之助は、参拝を終えてから境内の茶店に憩うた。その時に、ふと彼はそばの百姓体の男が、居合せた参詣客に、

「その御出家は、元は江戸から来たお人じゃげな。若い時に人を殺したのを懺悔して、諸人済度の大願を起したそうじゃが、今いうた樋田の刳貫は、この御出家一人の力でできたものじゃ」と語るのを耳にした。

この話を聞いた実之助は、九年この方いまだ感じなかったような興味を覚えた。彼はやや急き込みながら、「率爾ながら、少々ものを尋ねるが、その出家と申すは、年の頃はどれぐらいじゃ」と、きいた。その男は、自分の談話が武士の注意をひいたことを、光栄であると思ったらしく、

「さようでございますな。私はその御出家を拝んだことはございませぬが、人の噂では、もう六十に近いと申します」