Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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あいのごとく

愛のごとく

山川 方夫

Lee 愛のごとく (あいのごとく) de 山川 方夫 (やまかわまさお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 103.908 caracteres · 210 pantallas

Aozora Bunko

「女か」

「そんな気の利いたものはないよ」

「……闇ブローカーになんかなりゃがって」

信二はだまっていた。兄と争うつもりはなかった。なにかをいい出せば、きまって兄は敗戦以来、魂の抜けた人のように、一向に働こうとしない父を毒づく。そして病気で寝こんでいる母も母だとぶつぶついう。兄との口争いが結局は厄介などうどうめぐりでしかなく、つまりは兄の両親への悪態と愚痴になるのはわかっていた。信二はわざと欠伸をした。「出てってくれよ、勉強があるんだから」

「ふん。……ダーチーにいくら渡している」

「百五十円だね」

「折半かい」

「そういうことになっている」

「お前のことだ。きっとそれ以上のマージンでさばいているんだろう。キャバレエで売っているのか?」

「いろいろだよ、キャバレエはたたかれて損をするよ。前アルバイトしてた会社や店がある。学校でだって案外たかく売れる」

「ちゃっかりしてやがらあ」兄はほがらかにいった。「お前を見直したよ、お前はけっして損になるような取引きはしない男らしいな」

信二は答えずに辞書をつかんだ。兄の物いいは、ときどき上官みたいになる。それがきらいだった。

階下で、急に朝の空気を引き裂くような甲高さで、間貸し人の赤ん坊が精いっぱいの声をはりあげて泣きはじめた。