Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

ja-reading.com

Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.

てがみ

手紙

芥川 竜之介

Lee 手紙 (てがみ) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 5390 caracteres · 11 pantallas

Aozora Bunko

「ええ。きょうは誰も、……まあ、どうかおはいりなさい。」

M子さんは襖をあけたまま、僕の部屋の縁先に佇みました。

「この部屋はお暑うございますわね。」

逆光線になったM子さんの姿は耳だけ真紅に透いて見えます。僕は何か義務に近いものを感じ、M子さんの隣に立つことにしました。

「あなたのお部屋は涼しいでしょう。」

「ええ、……でも手風琴の音ばかりして。」

「ああ、あの気違いの部屋の向うでしたね。」

僕等はこんな話をしながら、しばらく縁先に佇んでいました。西日を受けたトタン屋根は波がたにぎらぎらかがやいています。そこへ庭の葉桜の枝から毛虫が一匹転げ落ちました。毛虫は薄いトタン屋根の上にかすかな音を立てたと思うと、二三度体をうねらせたぎり、すぐにぐったり死んでしまいました。それは実に呆っ気ない死です。同時にまた実に世話の無い死です。――

「フライ鍋の中へでも落ちたようですね。」

「あたしは毛虫は大嫌い。」

「僕は手でもつまめますがね。」

「Sさんもそんなことを言っていらっしゃいました。」

M子さんは真面目に僕の顔を見ました。

「S君もね。」

僕の返事はM子さんには気乗りのしないように聞えたのでしょう。