Clásicos japoneses con furigana
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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Lee 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) de 室生 犀星 (むろうさいせい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 177.454 caracteres · 357 pantallas
私は、春になると何より杏の花の匂いをかぐのが楽しみです。
「山にはどんな花が咲くの、杏なんぞあるの。」
「いえ。」
姉はちょいと考えるようにして、
「躑躅なぞはみんな紫なの、百合もそんな色をしているの、それから岩照しや、雪の下などという花があったり、ずいぶん珍らし花があるんですて、町の方ですっかり桜が散ったころに、やっと山の麓の桜がほころびかかり、それが一日ずつ山の頂きへ向って咲きのぼるんですて。」
私は、そこにも人間が住んでいるのかと訊ねた。もしそういう処に人間がどうして住めるものだろうかと考えたからです。姉は頭を振って、
「その山の下には住んでいるんだけれど、山の中にはいないの。考えたってわかるでしょう。」
「わかるけれど……。」
「夏になると雑草が繁って登れないんだそうだよ春ならいいんだけれど……。」
そのとき何処から流れてきたか、温かい白い雲がちぎれちぎれになって、山の頂へ、ふうわりと懸りました。まるで小さい帽子のように、ふしぎなまだ私の見たことのない国の上の秘密をつつむように、いく片となく浮きよせてきました。
私は毎日うしろの磧へ出ては、ぼんやりその山を眺めてはいました。