Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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めいじびじんでん

新編 近代美人伝 (上)

長谷川 時雨

Lee 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 129.076 caracteres · 256 pantallas

Aozora Bunko

ほんのりと、庭の燈籠と、室内にもわざと遠くにばかり灯させたのが、憎い風情であった。

「お鯉さんです」

そうであろうとは思っていたが――

切髪の女は小さい白扇をしずかに畳んで胸に差した――地味な色合――帯も水色をふくんだ鼠色で、しょいあげの色彩も目立たない。白い扇の、帯にかくれたさきだけが、左の乳首の下あたりに秋の蝶のとまったようにぴったりと……

黒い夜空ににおいそめた明星のように、チラリチラリと、眼をあげるたびに、星のような瞳が輝き、懐しいまたたきを見せる。唇と、眼とに、無限の愛敬を湛えて、黒いろ絽の、無地の夏コートを着て、ゆかしい印象を残してその女は去った。

「ほんとにあの女は、良い人間すぎてね」

それは誰れやらの老女の歎息であった。

一世お鯉――それは桂さんのお鯉さんと呼ばれた。二世お鯉――それも姐さんの果報に負けず西園寺さんのお鯉さんと呼ばれた。照近江のお鯉という名は、時の宰相の寵姫となる芽出度き、出世登竜門の護符のようにあがめられた。登り鯉とか、出世の滝登りとか、勢いのいいためしに引く名ではあるが、二代揃っての晴れ業は、新橋に名妓は多くとも、かつてなき目覚しいこととされた。