Clásicos japoneses con furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lee 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 149.813 caracteres · 302 pantallas
※に切捨てた沢菴の尻も昨日の茶殻に交って、簓と束藁とは添寝でした。眺めては思い、考えては迷い、あちこちと歩いておりますと、急に楽隊の音がする。大太鼓や喇叭が冬の空に響き渡って、君が代の節が始りました。台所の下駄を穿いて裏へ出て見ますと、幾千人の群の集った式場は十字を白く染抜いた紫の幕に隠れて、内の様子も分りません。幕の後から覗く百姓の群もあれば、柵の上に登って見ている子供も有ました。手を拍く音が静って一時森としたかと思うと、やがて凛々しい能く徹る声で、誰やらが演説を始める。言うその事柄は能く解りませんのでしたが、一言、一言、明瞭耳に入るので、思わず私も聞惚れておりました。
丁、と一つ、軽く背を叩かれて、吃驚して後を振返って見ると、旦那様はもう堪えかねて様子を見にいらしったのです。旦那様も唖、私も唖、手附で問えば目で知らせ、身振で話し真似で答えて、御互にすっかり解った時は、もう半分讐を復したような気に成りました。私も随分種々な目に出逢って、男の嫉妬というものを見ましたが、まあその時の旦那様のようなのには二度と出逢いません。恐らく画にもかけますまい。