Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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はる

春

豊島 与志雄

Lee 春 (はる) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 10.464 caracteres · 21 pantallas

Aozora Bunko

鼾の音が起ったり消えたりする。またカフェーで酒をのんできた奴だろう。足をばたりとさせる者がある。電車にも乗らずに徒歩通学をしてる苦学生だろう。そして至るところに、低い単調な、而も天井まで室一杯拡がろうとするかのような、永遠の寝息の音……。

室の中のむーっとした空気が、六人の男の口から、幾度交る代る吐き出され吸いこまれてることだろう。然し窓を開け放すことは厳禁されている。戸外の新鮮な夜気は睡眠者の喉を害するそうである。

和田弁太郎は起き上ろうとする。が、それがやはり夢現である。頭の一部がしびれて、そこが大きくふくれ上り、千斤の重みの綿みたいな感じになる。ふわりとしていて、不可抗力的に重い。その中へ、かすかな意識が引きずりこまれてゆく。

身動き一つすることが出来ない。息苦しくなる。眼には見えないが、そこらに眠ってる人数が幾何級数的に殖えてゆく。その無数の口から吐き出される息が、積り積って、なま温くのしかかってくる。穢らわしい擽ったい感触である。いつまでも動かない……。

その感触がどこか遠くで、粘りっこい笑い方をしている。お梅だ。手の皮膚のざらざらした、土くさい、力強いぼってりした腕で、じりじり緊めつけてくる……。