Clásicos japoneses con furigana
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ばんきく
晩菊
林 芙美子
Lee 晩菊 (ばんきく) de 林 芙美子 (はやしふみこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 15.998 caracteres · 32 pantallas
激しい思い出ほど、時がたてば何となくなつかしいものだ。――田部が尋ねて来たのは五時を大分過ぎてからであったが、大きな包みをさげて来た。包みの中から、ウイスキーや、ハムや、チーズなぞを出して、長火鉢の前にどっかと坐った。もう昔の青年らしさはおもかげもない。灰色の格子の背広に、黒っぽいグリンのズボンをはいているのは如何にもこの時代の機械屋さんと云った感じだった。「相変らず綺麗だな」「そう、有難う。でも、もう駄目ね」「いや、うちの細君より色っぽい」「奥さまお若いンでしょう?」「若くても、田舎者だよ」きんは、田部の銀の煙草ケースから一本煙草を抜いて火をつけて貰った。女中がウイスキーのグラスと、さっきのハムやチーズを盛りあわせた皿を持って来た。「いい娘だね……」田部がにやにや笑いながら云った。「ええ、でも唖なのよ」ほほうと云った表情で、田部はじいっと女中の姿をみつめていた。柔和な眼もとで、女中は丁寧に田部に頭をさげた。きんは、ふっと、気にもかけなかった女中の若さが目障りになった。「御円満なのでしょう?」田部はぷうと煙を吹きながら、ああ僕ンとこかいと云った顔で、「もう来月子供が生れるンだ」