Clásicos japoneses con furigana
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しゅにっき
朱日記
泉 鏡花
Lee 朱日記 (しゅにっき) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 13.583 caracteres · 28 pantallas
「あ熱々!」
と唐突に躍り上って、とんと尻餅を支くと、血声を絞って、
「火事だ! 同役、三右衛門、火事だ。」と喚く。
「何だ。」
と、雑所も棒立ちになったが、物狂わしげに、
「なぜ、投げる。なぜ茱萸を投附ける。宮浜。」
と声を揚げた。廊下をばらばらと赤く飛ぶのを、浪吉が茱萸を擲つと一目見たのは、矢を射るごとく窓硝子を映す火の粉であった。
途端に十二時、鈴を打つのが、ブンブンと風に響くや、一つずつ十二ヶ所、一時に起る摺半鉦、早鐘。
早や廊下にも烟が入って、暗い中から火の空を透かすと、学校の蒼い門が、真紫に物凄い。
この日の大火は、物見の松と差向う、市の高台の野にあった、本願寺末寺の巨刹の本堂床下から炎を上げた怪し火で、ただ三時が間に市の約全部を焼払った。
烟は風よりも疾く、火は鳥よりも迅く飛んだ。
人畜の死傷少からず。
火事の最中、雑所先生、袴の股立を、高く取ったは効々しいが、羽織も着ず……布子の片袖引断れたなりで、足袋跣足で、据眼の面藍のごとく、火と烟の走る大道を、蹌踉と歩行いていた。
屋根から屋根へ、――樹の梢から、二階三階が黒烟りに漾う上へ、飜々と千鳥に飛交う、真赤な猿の数を、行く行く幾度も見た。